その唇で甘いキスをして…
アタシはその夜、ハルさんに抱かれた。

ハルさんは天邪鬼で
欲しくて酔って訪ねたアタシは嫌なのに

別れたいと言って帰ろうとするアタシを欲しがった。

その夜、帰らなかった事をカオルに責められて
アタシは板挟みだった。

「ハルさんと寝たんだろ?」

「ハルさんと…別れるまでには時間がかかる…。」

「簡単には行かないだろうな。」

カオルはアタシにキスしようとした。

アタシはそれを拒んだ。

「…ジュン?」

「ごめん。別れるまではこういうの止めよう。」

「やっぱハルさんと寝たろ?」

カオルもまたアタシに執着する。

愛なんていったいどこにあるんだろう?

「アタシを…ひどい女にしないで。」

ハルさんが買ったこの部屋にアタシはカオルを泊めるワケにはいかなかった。

あの日、この部屋でカオルと寝た事をずっと後悔していた。

正直、どうしていいのかわからない。

ハルさんを愛してるけどもう取り返しがつかない。

カオルをこれ以上傷つける事も出来なかった。

夜遅く、ハルさんが酔っ払って部屋に来て
突然、アタシにキスした。

「なんであの日お前を抱かなかったと思う?」

「ハルさん…飲み過ぎだよ。」

「自信がなかったからだ。

お前とカオルの間で…苦しむのに疲れたんだ。

でも…お前は絶対に俺のところに帰ってくるって信じてた。

なのに…カオルを選ぶのか?」

「あの時…アタシはハルさんが必要だった。
でもハルさんがそれを拒んで自信を無くしたの。

だから…もう…ハルさんとは…ダメだって思って…」

アタシは重大な罪をおかした。

もう戻れないのに…

アタシはハルさんに言った。

「愛してるのはハルさんだけど…

ハルさんはアタシが居なくても平気でしょ?」

ハルさんはアタシを床に押し倒した。

「お前が思うほどオレは強くない。

10年も手を出せないほどお前にフラれるのが怖かったんだ。」

それを聞いてアタシはまた後悔する。

アタシの心はまだハルさんのモノだとわかった。



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