その唇で甘いキスをして…
アタシは泣いていた。

ハルさんはアタシを見ないでそのまま帰って行った。

カオルはアタシと繋いだ手を離さなかったけど
アタシはそれを振り払ってハルさんを追いかけた。

「ハルさん…ごめん…ごめんね。」

ハルさんは振り向かなかった。

アタシはその場に座り込んで泣いた。

ハルさんとはもう終わりだと思った。

「帰ろう。」

カオルがアタシの身体を抱き上げて
事務所に向かって歩かせる。

ベッドもない部屋で2人で眠るのは無理だ。

「ごめん。1人になりたい。」

アタシはハルさんの買ってくれたマンションに帰った。

1人でただ飲んだ。

アルコールでワケがわからなくなって
ハルさんに電話をかけてた。

「ハルさん…だからダメだって言ったでしょ?」

ハルさんは何も言わなかった。

「アタシを許さないで…

2度と愛してるとか言っちゃダメだよ。」

「ジュン…後悔してるんだろ?」

「…うん…すごくね。
ごめんね…
ハルさんのこと傷つけて。」

「お前も傷ついてるだろ?」

「アタシはいいの。

アタシが悪いんだから…。

でもね、ハルさん…」

「ん?」

「あの日…ハルさんに抱いて欲しかった。」

アタシはそう言って泣いた。

ハルさんから返事は返って来なかった。



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