クールな御曹司にさらわれました
少し休憩して仕度を整えると、ふたりでお財布だけを持って家を出た。
外に出てみてわかる。
この別邸もまた、広いお屋敷だ。
平屋の家屋は竹林に囲まれ、周囲は閑静な住宅地である。高台にあるようで、木々の向こうに街並みが見えた。

どこへ行くのかと聞こうとしてやめた。
たぶん、はっきりとした目的地はないのだろう。

「鎌倉へは来たことがあるか?」

「あ、はい昔……なんでだっけ?子どもの頃なのであまり覚えてないですけれど」

「そうか、じゃあ定番コースで小町通りでも歩くか」

駅を抜け、反対側のロータリーに出ると、土曜の朝早くということもあり観光客はまばらだ。左手に鳥居があり、そこを折れると有名な小町通りだった。

「まだやっている店は少ないな」

ぽつぽつと開店準備を始める店を眺めながら、ふたりで並んで歩く。こうして尊さんと並んでみると、結構身長差があることを実感する。

「タマは小さいな。見失いそうだ」

「尊さん、何センチあるんですか?私は150センチですけど」

「180センチだ」

「30センチ差……」

年齢は確か5つ違い。150センチ、25歳、貧乏人(借金中)の私と、180センチ、30歳、御曹司の尊さん。
どうして、土曜の朝に、ふたりきりで観光地を歩いているんだろう。
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