クールな御曹司にさらわれました
「手を繋いでやるか?」

不意に言われ、私は首がねじ切れるくらいの勢いで尊さんを見た。

「どうしちゃったんですか?何か悪いものでも食べました?」

「今朝の話なら、おまえと同じものしか食べてないな」

「ですよねぇ」

「脚の長さが違うからな。置いて行ってしまったり、はぐれないようにと思ったんだが、まだ人も少ないからいいか」

尊さんは真顔でそう答える。

もしかして、この人、大真面目に心配して言ったの?私をからかうとかそういった気持ちはないみたいだ。
うわあ、なんか私ひとりで動揺して恥ずかしいな。

小町通りとは参道でもあるらしい。交差点を渡ると、そこは鶴岡八幡宮だった。

「お参りですか?」

「いや、ここは見るだけにしよう。お参りは別なところで。あまりあちこちで祈ると浮気と思われるからな」

冷徹で合理的な御曹司様とは思えない神様発言。
でも、案外そういうものなのかも、経営者って。人事を尽くして天命を待つっていうか。
神頼みに頼るという意味合いではなく、敬意を払うことを知っているというか。

鶴岡八幡宮は見て回るだけでも荘厳で綺麗だった。
散策にぴったりで、徐々に増え始める観光客の流れに逆らうように私たちは神社を出た。
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