クールな御曹司にさらわれました
背の低い樹木の間に海岸線が見える。水平線までの広大な海が見渡せた。
見晴台のようだけど、あまり手入れは行き届いてなさそう。ウッドデッキはぼろぼろで草がはみ出ている。手すりには寄りかからないほうがいいかもしれない。
ウッドデッキの片隅に棒につりさげられたベルがある。手作り感満載のそれを見て、私はふと頭の中を何かが通り過ぎて行く感覚を覚えた。
私、ここ、知ってる。
「尊さん、ここ」
「海がよく見えるだろう。このレストランの以前のオーナーが作ったものだ。今のオーナーはほったらかしているようだがな」
「そのベル……」
「慣らしてみたらどうだ。良い音が鳴るとは思えんがな」
私は恐る恐る近づき、茶色く変色したロープを握った。ゆすると、くぐもった音でカランと鳴る。
「お、思ったより錆びてないな」
「尊さん、私、ここにきたことがあります」
私の言葉に尊さんがわずかに眉をあげた。
私は次々に符合していく記憶の断片に胸がいっぱいになった。
そうだ、あれは私が小学生の頃、まだ母は元気だった。父は相変わらず商売に失敗続きだったけれど、優しい人で、お金があるときはあちこちに連れて行ってくれた。
「父が、連れてきてくれたんです。……子どもの頃。海がきれいなポイントを見つけたって。でも私たち、お金があるわけじゃないから、レストランは利用しなかったんだと思います。駐車場のすみっこにこそっと車を止めて、歩いてここを登った」
見晴台のようだけど、あまり手入れは行き届いてなさそう。ウッドデッキはぼろぼろで草がはみ出ている。手すりには寄りかからないほうがいいかもしれない。
ウッドデッキの片隅に棒につりさげられたベルがある。手作り感満載のそれを見て、私はふと頭の中を何かが通り過ぎて行く感覚を覚えた。
私、ここ、知ってる。
「尊さん、ここ」
「海がよく見えるだろう。このレストランの以前のオーナーが作ったものだ。今のオーナーはほったらかしているようだがな」
「そのベル……」
「慣らしてみたらどうだ。良い音が鳴るとは思えんがな」
私は恐る恐る近づき、茶色く変色したロープを握った。ゆすると、くぐもった音でカランと鳴る。
「お、思ったより錆びてないな」
「尊さん、私、ここにきたことがあります」
私の言葉に尊さんがわずかに眉をあげた。
私は次々に符合していく記憶の断片に胸がいっぱいになった。
そうだ、あれは私が小学生の頃、まだ母は元気だった。父は相変わらず商売に失敗続きだったけれど、優しい人で、お金があるときはあちこちに連れて行ってくれた。
「父が、連れてきてくれたんです。……子どもの頃。海がきれいなポイントを見つけたって。でも私たち、お金があるわけじゃないから、レストランは利用しなかったんだと思います。駐車場のすみっこにこそっと車を止めて、歩いてここを登った」