クールな御曹司にさらわれました
「お夕飯、なんですかねぇ」

「ハンバーグステーキだと、誰かが言っていたな。ナツメグが入らないものが好きなんだが」

「ナツメグですか?私、入ってても入ってなくてもたぶん味の判別つかないです」

って、ハンバーグトークしてる場合じゃない。先に父親のこと言わなきゃ!!忘れてた!!
メトロの入り口に降りかけた尊さんの袖を引く。

「タマ?」

「尊さん、父が」

えーと、何から言おう。家にいた形跡はあるんだけど……。

その時だ、私の視界にものすごく見慣れた姿が見えた。
四車線の道路の反対側の歩道、若いキャバ嬢風の女の子と腕を組んでぶらりと歩いているあの男は……。

「お父さん……」

私が一点を見つめ凍り付いたのを見て、尊さんが弾かれたように振り向いた。

「真中……玄之丞……!!」

写真でしっかり確認しているだろう、尊さんにもターゲットの姿は視認できたようだ。
次の瞬間、私たちはどちらも無言で走り出していた。
二車線の都内国道は交通ルールを無視して斜め横断できるような交通量じゃない。
父の進行方向に先回りして、横断歩道へ。父は気付いていない。必死の形相で、信号待ちをしている私と尊さんに。

「間違いないな」

「間違えるはずがありません!」

信号が変わると同時に、私と尊さんは再び走り出した。
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