クールな御曹司にさらわれました
楽しそうに笑っている父が、何気なく顔を上げた。そして、必死の形相で走ってくる私を見つけた。横を走る身なりの良いイケメンに心当たりがあったかどうか。
顔色がさーっと変わって、一歩二歩と後退り。それから父は、隣の若い女の子を置き去りに、転がるように元来た道を逃げ出した。

「逃げた!!」

「追うぞ、タマ!!」

猛然とダッシュする私たち。会社員の多い歩道を、人を避けながら走るのは大変だ。しかも、父は速い。すでに50代も半ばなのに、めちゃくちゃ速い!

「おまえの父親はどうしてあんなに速いんだ!!」

おそらくスポーツは万能であろう尊さんが私の少し先を走りながら怒鳴る。

「わかりません!!逃げ足だけは速いんじゃないでしょーか!!」

「路地に入った!!行くぞ!」

私と尊さんも左手の路地に飛び込む。オフィス街の路地はビル群の隙間。割と人も歩いている。余計に走りづらいところを父はすいすい駆け抜けていく。どうなってんだ、うちのお父さん!!
めげずに追いかけ続けると、やがてオフィス街から倉庫や工場の並ぶ地帯に入り込む。人は減った。父が一度振り向いて、再びスピードをあげる。

私はさすがに息が切れてきた。ローヒールのパンプスだけど走るのには向いてないし、すでに一キロ以上ダッシュしてる。

「タマ、そのままやや右に寄って走り続けろ」

尊さんが息も切らさず指示を出してくる。
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