クールな御曹司にさらわれました
「真中玄之丞氏とお見受けいたす」

尊さんがそろりと父から退き、戒めから解放する。
しかし、父とてもうわかっているだろう。この人から現時点逃げるのはとても難しいということが。尻もちをついた姿勢になり、私と尊さんを見上げている。

「俺は、羽前二郎の実子だ。あなたに大きな貸しがあることは、もうおわかりだろう」

尊さんが完全に仇討ちの武士と化してる。
そりゃそうだよね。ここであったが100年目だよね。もう、好きに打ち取っちゃってください、はい。

「……っ、あー、ジロちゃんの息子さんかぁ、おっきくなったね」

父は頬をひくつかせながらも愛想よく言う。

「昔、何度も抱っこさせてもらったんだよぉ。覚えてないか~」

「昔話をする気はない。単刀直入に言おう。あなたが起業した会社はどうなった。持ち逃げした一億円はどうなった」

しいん、と空気が凍った。父が微妙な笑顔のまま固まっている。
ああ、すでに最悪の想像しかできない。

「えっとね、説明いる?」

当たり前だ!!
私と尊さんがコクコク頷く中、父が頭を掻き掻き口を開く。

「えっとね、まず会社は本気でやる気だったんだよ?必要な環境関係の資格もとるつもりだったしさ。ただね、ちょっと俺、借金があったんだよね。で、運営資金から借りてささーっと返したわけ」

まず、その時点で横領になるんだけど……駄目だ、使っちゃいけないお金という概念がないんだ、この人。
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