クールな御曹司にさらわれました
「で、ちょうどね。仲良くしてるチャイナパブの小姐がさ故郷のお母さんが病気だとか言うじゃん?で、ちょこっと貸したんだ。そしたら、その友達もお金を貸してほしいって言うんだよ。人助けだし、やむなしだよねえって貸したら、あっという間に事業資金が半分以下になっちゃってさあ。会社に必要な事務所の契約資金とか備品のリースとか終えたら、早速赤字になっちゃったんだよ。まだ何にもしてないのに、驚いたよね」

「つまりは、運転資金がなくなったから逃げたということか」

「うーん、ありていに言えばそうだけど……悪気はなかったんだよ?ジロちゃんには落ち着いた頃謝ろうと思ってたし」

「あなたが起こした会社はレオマーケットグループ傘下にあたる。そして、あなたを信じた父の一存で起業した形だ。名義だけの架空起業に一億つぎ込んで溶かしたとなっては、父の権勢に関わるのだが、そのあたりはお分かりか?」

尊さんが冷静に、且つ冷ややかに言い放つ。父が背を丸め、気まずそうに笑った。この期に及んで笑えるのだからすごい。

「いや~、ごめんねぇ」

絶望的な現実に私は眩暈がした。資金を使い込んだ父は、返すお金もなければ、当てもない。
そして、私に残された選択肢はひとつしかない。

「あなたには、これから父のもとに同行していただく。父はあなたに甘いからな。俺も同席して、今後について話し合っていただく」

「あ、警察は勘弁してくれるんだ。ありがたいなぁ。やっぱ優しいね、ジロちゃんの息子さんだけあるなぁ」

おべっかを使ってみる情けない父の処世術に私はわなわなと握った拳を震わせた。
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