クールな御曹司にさらわれました
「どうした?黙っちゃって。御曹司のこと思い出してる?」

「思い出してないっつうの!」

軽く嘘をつきながら、言い訳を重ねる私。

「あとね、なんかお父さんを人質に取られてるようなもんで、はっきりと断れないのよ。借金のことも大まけにまけてもらってるみたいだし」

「御曹司としては、人質にとったつもりもないんだろうな。借金や仕事の世話は、嫁の父親だから優遇したり大目に見てやるくらいのさ」

「そうなんだよねぇ」

尊さんは意地悪だし、冷徹悪魔だけど、むやみやたらに悪辣なわけじゃない。私への気持ちはおそらく本気だ。好意の種類や、気持ちの永続性はともかく、大事に想ってくれているのはわかる。
だけど、それについていけない私もいる。

「真中は羽前尊を好きじゃないの?」

「ううーん……」

私は腕を組んで唸ってしまう。
そこなのだ。そこも問題なのだ。

嫌いなら「無理!やめて!」って言える。現にオイルマネーダーリンとの結婚は、完全拒否で通した。でも、尊さんを完全拒否できるかっていうと……。どうしよう……。

嫌いではない。憎めないところのある人だし、私を見つめる真摯な瞳もくすぐったいような嬉しいような気持ちにさせてくれる。

でも、これってイコールで恋?

「好きになっちゃいけない気がする。ここで流されたら、尊さんにも失礼だろうし」

「好きになるの怖いなんて、乙女~」

「慎重に検討してんの。だって、人生かけた大問題になりそうだから」
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