クールな御曹司にさらわれました
「私、ハニーミルクって大好きなの」

初めて会ったときは、ショートカットに凛々しめカジュアルなお母さんを、尊さんの会社関係者かと思ったっけな。こうして、部屋着に毛足の長いガウンを羽織った姿を見れば、お母さんは線の細い優しげな奥さんだ。

「普通のお店じゃなかなか飲めないのよね」

「そうですね。売ってないですね」

そこで少し黙る私たち。

正直、心配だった。尊さんが私を紹介したことは置いておいて、お母さんは私が……どんな素性か知っている。羽前家にご迷惑をかけた借金男の娘だ。
この前は歓迎の素振りを見せてくれたけれど、実際はどう思ってるんだろう。
本当のところ尊さんには、もっといいところのお嬢さんと結婚してほしいんじゃないかな。

「ハニーミルクってね」

お母さんがぽつりと言う。

「小さい頃から、ベッドの上で過ごすことが多かったから、私には一番のご馳走だったのよ」

お母さんの言葉をはかりかねて顔をあげる。お向かいの席でお母さんはにこにこしていた。両手でマグカップを大事そうに包んで。

「こう見えて、あまり身体が強くないの」

とっておきの内緒話をするように言われる。

「産まれたときから低空飛行の体調でね。心臓が丈夫じゃないんですって。尊を産むのも医者からは危ないって止められて、10ヶ月間、ほとんど点滴に繋がれて過ごしたわ。尊が産まれたら主人が跡継ぎはできたから、ここからは養生してくれって言うの。私はもうひとりかふたり赤ちゃんが欲しかったんだけどねぇ」

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