クールな御曹司にさらわれました
「駅に向かいましょう」

私は尊さんの先に立って、JRの駅に向かう。
山手線から別な路線に乗り換えてさらに80分。私も尊さんもあまり喋らなかった。途中で電車の向きが変わったことと、景色がのどかになっていくことを少々つぶやいただけ。

尊さんはどこに行くのか聞かなかった。私に全権を委任しているのだろう。

ようやくついた隣県の駅は、観光地であるものの静かだった。広い空を雲がゆっくりと流れ、背の低いビルや駅舎に日差しが明るく降り注いでいる。高く旋回しているのは鳶だろうか。
特急から各駅停車に乗り換える人たちの動きもせかせかしてない。時間の流れが都心部とは違うみたいだ。

「こっちです」

尊さんを連れてレンタサイクルを借りることにした。さすがに尊さんはこれには驚いた顔をする。

「これでデートか?」

「自転車乗れないとか言いませんよね」

「言わないが……」

「大きい公園に行くので、こういうのがあった方がいいかなと思います」

尊さんは素直に頷いた。
サイクリングデートって、尊さんのキャラと合わないし初めてみたいだし、私の土俵に連れてこれてる感じしない?
< 147 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop