クールな御曹司にさらわれました
もう少し、自転車を進める。芝桜の地点を過ぎるといよいよ人が少なくなってきた。
開けたところで自転車を止め、私はばさりとレジャーシートを敷いた。

「お昼にしましょう」

通りかかるのは犬の散歩の人や、ランニング中の人。観光客は私たちくらいだ。
妙にさびれた公園……というか山で、手作りのお弁当を広げる。

「シェフに作らせたのか?」

一目見て尊さんが言うので、のろのろと首を振る。

「私が……作りました」

「なるほど、確かに卵焼きの崩れ方はうちのシェフの仕事じゃないな。おにぎりも正三角形ではないし」

「なんですか、その言いぐさは。あげませんよ」

「これでくれないと言うなら、おまえを鬼と認定しよう。恨むぞ」

理不尽な言われ方をしつつ、並んでお弁当を食べることになった。
卵焼きはシェフ直伝だ。尊さんもすぐに家の味と気付いたらしい。「うまいじゃないか」とぼそりと言って、お弁当を食べ進める。

私は横目でちらちらと尊さんを盗み見た。
さあ、どうでしょう。こんな感じが私のナチュラルなデートですけど。
庶民は毎回お高いレストランなんか予約しないんです。お弁当持って遠出したり、サイクリングデートしたりするんです。

ほら、こんなに価値観違うよ?
いいの?まだ私を好きだとか言っちゃうの?

「これは遠足か?」

突如、尊さんが妙なことを言いだして、私はぶほっと飲みかけたお茶を噴いた。
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