クールな御曹司にさらわれました
「遠足って……何をいきなり」
「小学校のときに、経験したことがある。弁当を持って、野山を歩くアレだ。つまりこのデートは遠足というわけだな」
「意味合い的には一緒ですけど、ピクニックって言葉にしません?」
遠足の持つ小学生感がすごいんだもん。
ちょっと、待って?尊さんは一回しかこういう行事を経験していないの?
「小学校では一回だけですか?」
「ああ、通っていた学校は小学三年生まで毎年遠足があったが、内2回は母親の体調が悪くてな。不参加だった」
お母さん……そうか。心臓があまり強くないんだよね。
「中学年からは受験勉強が主になるから、あまり遊べる学校ではなかったな。家族でこうした外出も経験がない。親父は忙しかったし、母親は病弱だ。遊園地や博物館は加茂がよく連れて行ってくれたな。しかし、ピクニックというのはなかった」
「外でお弁当を食べるって楽しいんですよね。うちは、外食とかできないくらい貧乏だったので、いつも出かけるときは母がおにぎりを作ってくれて。どこに行っても、公園でおにぎりでした」
「いい母君じゃないか。……俺は母親を不満に思ったことはないが、いつも不安ではあった。きっと母親は長く生きない。そんな心配がいつも心にあってな。母を困らせないように、我儘を言わないように気を付けていた。母の負担になりたくなかった」
尊さんはおにぎりを手にふと空を見上げる。
その横顔は無防備で、年よりずっと幼く見えた。
「小学校のときに、経験したことがある。弁当を持って、野山を歩くアレだ。つまりこのデートは遠足というわけだな」
「意味合い的には一緒ですけど、ピクニックって言葉にしません?」
遠足の持つ小学生感がすごいんだもん。
ちょっと、待って?尊さんは一回しかこういう行事を経験していないの?
「小学校では一回だけですか?」
「ああ、通っていた学校は小学三年生まで毎年遠足があったが、内2回は母親の体調が悪くてな。不参加だった」
お母さん……そうか。心臓があまり強くないんだよね。
「中学年からは受験勉強が主になるから、あまり遊べる学校ではなかったな。家族でこうした外出も経験がない。親父は忙しかったし、母親は病弱だ。遊園地や博物館は加茂がよく連れて行ってくれたな。しかし、ピクニックというのはなかった」
「外でお弁当を食べるって楽しいんですよね。うちは、外食とかできないくらい貧乏だったので、いつも出かけるときは母がおにぎりを作ってくれて。どこに行っても、公園でおにぎりでした」
「いい母君じゃないか。……俺は母親を不満に思ったことはないが、いつも不安ではあった。きっと母親は長く生きない。そんな心配がいつも心にあってな。母を困らせないように、我儘を言わないように気を付けていた。母の負担になりたくなかった」
尊さんはおにぎりを手にふと空を見上げる。
その横顔は無防備で、年よりずっと幼く見えた。