クールな御曹司にさらわれました
「おはようございます」

突然、ドアが開いた。いや、正確にはノックがあった。しかし、心ここにあらずの私は無反応だったのだ。入ってきたのは昨夜お世話になった使用人の女性たちの誰でもなかった。

メガネをかけた美しいセミロングの女性がグレーのスーツをびしっと着こなし、立っている。

「はあ、おはようございます」

Tシャツ一枚羽織っただけの無防備極まりない格好の私は、おずおずと頭を下げる。
女性がメガネの奥の瞳を細め、にっこりと笑った。

「真中妙さん、私は羽前尊社長の秘書をしております御台寺(みだいじ)サラと言います。今日はあなたの朝のお仕度を手伝うために参りました」

「え?はあ」

「会社に出勤されるんでしょう?着替えやメイク道具はありますので、ご用意します。一緒に朝食を食べたら、電車で通えるように、今日は私が同行します」

にこやかに微笑むとびきり美人の御台寺さんとやら。
えーと、待って。私の鈍い&パニックの頭でゆっくり整理させてね!えーと、私のお世話と監視をする方なのかな?

「まずはお着替えですね。私が選んだものなので、趣味に合うかわかりませんけれど」

手渡されたのはさらっとした上質な手触りのモスグリーンのワンピース。それにストッキングとジャケット。
ワンピースはたぶんシルクだ。大学の謝恩会すらファストファッション店のポリエステルのドレスで乗り切った私としましては、初めて触る上質な代物です。

ええと、御台寺さんとやら、完全によそ行きの体ですが、これを通勤服として貸してくださるってことでしょうか。ひとつ、お答えを……。
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