クールな御曹司にさらわれました
電車が動き出した。ガタンタン、ガタンタン。
規則的な音、あがっていくスピード。

尊さんが私を見ている。
追いかけようにも間に合わないことは子どもだってわかるだろう。彼の表情は失意で暗かった。私を見つめる瞳は憤りを写していた、私のうぬぼれでなければ。

涙が出た。
ようやく気付いた。

怒っているのだ。
私は、尊さんに対して猛烈に怒っているのだ。
だまし討ちのように婚約しようとした彼にどうしようもない怒りを感じている。

私は尊さんを信用していた。尊さんを理解したいと思っていた。


尊さんを……好きになり始めていた。

レオマーケットグループの御曹司ではなく、ひとりの男性として尊さんを尊敬し、彼に好意を感じ始めていた。

復讐。その言葉がしっくりきた理由はこれだ。
好きな人だからこそ許せなかった。
裏切りだと思った。
好きな人だからこそ、上下のある対等ではない関係は駄目だと思った。もう傍にいるべきではない。

「なんだ……そうだったんだ……」

気づきたくなかった、こんな気持ち。今頃になって。

滑らかにスピードをあげていく特急。
窓枠に突っ伏し、私は呻いた。



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