クールな御曹司にさらわれました
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特急が金沢駅に到着したのは二時間と少し経ってから。
ホームで尊さんが待っていた時、私はなんとなくわかっていたため驚きもしなかった。
「ヘリでも飛ばしたんですか?」
近づいて視線も合わせず問うた声は、雑踏に紛れた。尊さんは悪びれる様子もなく頷いた。
「途中で他の駅に降りれば逃走劇は続けられたぞ」
ゆるゆると首をふる。
「もういいです。きちんとお話することにします」
ここに来るまでに私も考えた。
もし、尊さんと次にあったら、逃げるのはやめよう。きちんと言いたいことを言おう。
私は彼を見据えてから、頭を下げた。
「羽前尊さん、あなたとは結婚できません」
「なぜだ」
間髪入れず尊さんが応戦してくる。
「おまえに損はさせない。父親の件も含めて」
「強引に婚約パーティーを設定するような人とは無理です」
私は顔をあげた。たぶん、私の目は悔しそうに細められていて、且つ彼を睨みつけているのだろう。