クールな御曹司にさらわれました





特急が金沢駅に到着したのは二時間と少し経ってから。
ホームで尊さんが待っていた時、私はなんとなくわかっていたため驚きもしなかった。

「ヘリでも飛ばしたんですか?」

近づいて視線も合わせず問うた声は、雑踏に紛れた。尊さんは悪びれる様子もなく頷いた。

「途中で他の駅に降りれば逃走劇は続けられたぞ」

ゆるゆると首をふる。

「もういいです。きちんとお話することにします」

ここに来るまでに私も考えた。
もし、尊さんと次にあったら、逃げるのはやめよう。きちんと言いたいことを言おう。

私は彼を見据えてから、頭を下げた。

「羽前尊さん、あなたとは結婚できません」

「なぜだ」

間髪入れず尊さんが応戦してくる。

「おまえに損はさせない。父親の件も含めて」

「強引に婚約パーティーを設定するような人とは無理です」

私は顔をあげた。たぶん、私の目は悔しそうに細められていて、且つ彼を睨みつけているのだろう。
< 175 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop