クールな御曹司にさらわれました
「これが、真中玄之丞か」
父と小学生の私が映っている写真だ。私は頷く。写真だけど、ちょっと若い頃のだけど、久し振りに父の顔を見た気がした。

「人畜無害そうな顔をしているぞ」

「そうなんです。それが悪いところで。みんなこの見た目と口の上手さに騙されちゃうんです。実際、悪気もゼロなんでタチが悪くて」

「悪気ゼロの人間は横領なんかしないと思うが」

いや、そこもわからない。父がどういうつもりで事業を投げ出し、お金を持ちだしたのか。案外、やってしまってから事の重大さに気づいて逃げ回っているのかもしれない。
そういうところのある人だもん。

私は両親と中学生の私が映った写真を一枚、アルバムから取った。

「それにするのか?」

母の写真と言いつつ、父も映ったものを選んだ私に、尊さんが不思議そうに言う。
私は頷いた。

「ええ、一応家族なんで」

「タマ、おまえやっぱり感覚が狂ってるぞ。真中玄之丞は、他人を食い物にするクズだ。娘のおまえが割を食ってきたことは調べがついている。それなのに、まだ庇い立てする気があるとはな」

私が父親を庇うってのは尊さん的によくないことだもんね。大丈夫、逃走の手引きなんかしない。

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