クールな御曹司にさらわれました
「そうですね。確かに庇うべきではないし、庇いたくもないです。……そこは家族だからですかね。父のことはどうしようもない人だと思ってますし、母が無理して亡くなった元凶は父だとも思います。でも、捨てられるかっていうと別な話になるっていうか」

尊さんは一瞬黙り、何か考えるふうに視線をずらしたけれど、すぐに首を振った。

「信じられないな」

まあ、そうですよね。一般的な感覚じゃないですよね。居心地の悪さを感じながら頷く私。

「やはり、タマは父親の手の届かないところに嫁入りすべきだな。そうしないと、おまえは一生たかられるぞ、捨てられない父親に」

「それとこれとは別問題じゃないですか?嫌ですってば、海外に嫁入りは」

私は写真を手帳に挟み、鞄に入れた。その他の荷物は当座2日分の着替えくらいで、すべて通勤用の鞄に収まる程度だった。

「足りないものは御台寺に連絡しろ。今日中にそろえさせる」

そうして、私は住み慣れたアパートを後にした。この先、ここへ戻れるのはいつだろう。父が帰ってきていないか痕跡を調べる時は寄るだろうけど、ここで生活できるようになるのは父が見つかってからだ。

「帰ったら、タマには時間割をやろう。御台寺が作っておいたはずだ」

尊さんはさっさと靴を履き、先に立って部屋を出て行ってしまう。私は慌てて施錠し、尊さんの背を追った。

ん?時間割って……言ってなかった?
はあ、ともかくいよいよ、人質生活スタートだわ。


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