クールな御曹司にさらわれました
「生きてるよ。生きてるってだけだけど」

「家畜生活どう?」

「言い方……。うん、快適かな」

「嘘でしょ。そんなにやつれて、その羽前って御曹司、ペットとか家畜を育てたことがないんだね」

小森は毒を吐いているわけではない。
これが素だし、万事がこの調子なのだ。
むしろ、嘘がないから私はこんな小森が結構好きだけどね。友達として。

「ごはんが美味しい……しか救いはない」

「駄目だね、真中。死期が近いね。最初聞いた時は、お父さん探すってだけで、お屋敷に居候で美味しいごはんが食べられて一流教育が受けられて最高って思ったんだけど。やっぱ全然羨ましくないや。ごはんだけじゃ、人間の精神疲労は完治できない」

「ぶら下がり人生に定評のある小森でも嫌か。うん、そんな気がしてた」

「飲みに誘ってあげたいけど、駄目なんだろ?」

私はデスクにつっぷし、うりうりと額をこすりつけて呻いた。

「ううーん、お父さん探さなきゃ」

「アテあんの?」

私はまたしても悲哀に満ちた呻き声をあげる。

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