クールな御曹司にさらわれました
「この数日で出入りの店はいくつか回ったけど、空振り。これで見つからなければ、古い知り合いや、縁は切られちゃったけど親戚に聞いてみる。お父さんにバレないようにっていうのが大前提だから、大きくは動けないけど」

父は資産家の両親の遺産を大学時代で食いつぶし、母と結婚した後は母の親族から借金を重ねて、しまいには縁切りされてしまった。
頼るところのなくなった母がどんな想いで私を育ててくれたかを思うと頭が下がる。
そして、今、私の人生を大きく捻じ曲げるきっかけとなっている父への怒りはいや増すばかりだ。

「真中!すぐに来い!」

突然、車田課長の怒声が飛んでくる。
私はびくっと肩を揺らし、それでも大きな声で返事をし、機敏に歩み寄る。

「頼んでおいたデータが違うじゃないか!」

「あの……2014年と2015年の売り上げ推移データですよね」

「違う!2013年分と、2016年分もあるだけって言っただろう!」

聞いてない。絶対聞いてない。
わざと足りない指示を出しておいて、後で叱るっていうこの人の手口だ。

でも、こんなことはいつものこと。いびりなのは重々承知している。

「はい、申し訳ありません。すぐに作り直します」

「午前中うちにだ!できないなら、昼飯もトイレも禁止だ!」

わかりやすいパワハラですけどー。
先輩社員も気の毒そうに見ているけれど、誰も助けようとはしてくれない。
代わりにいびられるようになるのは目に見えているからだ。
そして、私も言い返したり、この不条理を口にする元気がない。

自分でわかってる、結構長いものに巻かれる人生なんだよなぁ。
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