クールな御曹司にさらわれました
ぐったり疲れて自分の席に戻ると、小森が言う。

「車田課長さ、たぶん“インソール”の調子が悪いんだよ。気にすんな」

「うはっ、笑わさないで」

小森の言う“インソール”はこの部署の誰もが知っている車田課長の弱点であり、私が車田課長に目をつけられた原因。

「革靴がシークレットシューズになってるとか、面白すぎだろ、車田課長」

「しーっ、小森聞こえるよ!」

私は笑いをかみ殺して注意する。

半年前のこと。私はうっかり課長の靴の内底が底上げされていることを発見してしまったのだ。

その日は豪雨で、社員の多くが通勤靴をオフィスの片隅に干し、スリッパで仕事をしていた。
靴を並べ直していた私は、私はまったく悪気無しに『この靴って課長のですよね』と靴を持ち上げたのだ。

すると中から黒い塊がぽろりと落っこち、オフィスの床にぼとりぼとり。
誰の目から見てもわかる、底上げのインソールだった。
この分厚いインソールが、車田課長の身長を十センチ底上げしていたわけで、さらにそれを脱ぐと身長は150センチの私とほとんど変わらないことに……。

車田課長・身長底上げ事件は、彼の部下全員に目撃され、そこから私は車田部長に親の仇のような扱いを受けている。

不運だったといえばそうなんだけど、やっぱり理不尽……。


データのまとめは、なんとか昼休みが十分押しただけで終えることができたのだった。

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