クールな御曹司にさらわれました
午後は課長が外出だったこともあり、これ以上絡まれることはなく、デイリー業務を終えると定時であがることができた。

とはいえ、自由時間があるわけではない。
父の行方を追わなきゃ。

もう尊さんが探したであろう場所をなぞる形で歩き回る。
行きつけのバーや、居酒屋、いまだ相手をしてくれる知り合い。一日で回れるわけはないから、一週間くらいで全部見て回るつもりだった。本日で、一応私の手がかりの店は終了だ。

今日顔を出したのは、新宿のゴールデン街のバーだ。
父の名を告げ、現在の居所や携帯番号を訪ねたけれど、オカマのママさんは肩を竦めるだけだ。

「玄ちゃんなら最後に来たのは三ヶ月以上前よ」

「その時、何か言っていませんでしたか?」

「そうねえ、お金が入るとは言ってたかな。珍しく羽振りがよかったわ」

うーん、嫌な予感。たぶん、そのお金って、尊さんのお父さんからせしめたものだよね。いよいよもって、悪意があったような気がしてくる。

「これからどうするとか、聞いてないですよね」

「そうねぇ、特には。ご機嫌だったくらいしか覚えてないわ。まあ、玄ちゃんが暗いことってほとんどないんだけどね」

万が一、父が本気で横領を企んで実行したとしたら、警察に突き出してもらってもいいかもしれない。
それが本人のためになるなら、私もいいやと思っちゃう。横領犯の娘って……生き辛いだろうけどさ。はあ。
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