クールな御曹司にさらわれました
御厄介になって数日の羽前邸は、尊さん専用の玄関から出入りすることにしている。
別棟だから顔を合わせることはないらしいけれど、尊さんのご家族とあったら、どんな顔をしていいかわからない。なるべく母屋に近い方面には行かず、玄関、部屋、ダイニング、稽古部屋以外は出歩かないようにしている。あとは、トイレとお風呂くらい。だから、私はこの広いお屋敷のごく一部しか知らないのだ。

本日も、与えられた自室に荷物を置いて、尊さん専用のダイニングに向かう。

「真中様、お帰りなさいませ」

人質だけど、ゲスト扱いをしてくださる使用人の皆様に感謝。
きょうのメニューは子羊のソテーになんとかっていうソースだそうです。本日も美味しすぎる~。くたくただけど、ごはんは食べられる自分のハングリーさ万歳。うん、食べられる限りは大丈夫、そんなもんだ。
というか、こんなに美味しいんだから楽しまないのは損だよね~。

舌つづみを打っていると、ダイニングのドアが開いた。尊さんが帰宅した直後という格好でいる。仕立ての良いスーツ姿は、控えめに言ってもカッコイイ。

「おかえりなさい」

「ただいま……タマ、上手そうなものを食ってるな。おい、俺の分も出してくれ」

尊さんはシェフに向かってがなると、上着を脱いだ。
個人のダイニングなので、さほど広くなく、シェフへの声はすぐに届く。お手伝いさんに渡されたおしぼりで手をふきつつ席につくと、尊さんの前にもメインプレートが置かれた。尊さんは満足そうにカトラリーを持ち、思い出したように言う。

「今日は俺と英語の日だったな」

「はぁ、そうですね」

テンション低くうなずく私。
< 40 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop