クールな御曹司にさらわれました
「タマ、今夜は出かけるぞ」

朝食の席で尊さんがそんなことを言いだした時、私は「は?」と思いきり変な顔をした。

私の怪訝そうな反応がお気に召さなかった様子の尊さんは、眉間に皺をよせ、こっちを見下ろしてくる。
同じ高さの椅子に座っているのに、身長と立場において向こうが大きすぎるため、私はいつだって見下ろされている格好だ。

「食事に行く。おまえは終業後、速やかにここへ戻り、出かける仕度をしろ」

「それは私と尊さんがですか?」

「そうだ、マナー講習を兼ねる」

つまりは、お高いフランス料理だとか、懐石だとかに連れて行かれちゃって、「見苦しく食べるな」とか「下品だ」とか罵られながら、小さくなってディナーを食すという……。
所謂地獄イベント発生ですか?

「えーと、今日は会社の飲み会があるかもしれなくてですね」

「断れ」

即答だ。ええ、まあそうですよね。きっと言うんでしょう?おまえに選択する権利はないとか。
もう面倒だから、何も言いませんけれど!

「帰るまでに今夜の衣装をおまえの部屋に置いておく。必ずひとりで着て来い」

「はあ、わかりました」

答えた私は、知らなかった。それもひとつのミッションであることを。




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