クールな御曹司にさらわれました
加茂さんの足音が遠ざかったことを確認すると私はそろりと私室を出た。

もう、恥も外聞もない。やっぱり佐久子さんか良枝さんに直してもらおう。

キッチンには誰もいない。
今日、尊さんも私も外食なので、用意の必要がないのだ。そうすると、使用人の人たちはこの広いお屋敷を銘々仕事で散ってしまう。

どうしよう。彼女たちを探すにはどうしたらいいの?

待って待って!そもそもまずいよね。私がお手伝いさんに頼んだら、ふたりに非があることになっちゃわない?
尊さんに怒られて立場悪くなっちゃうよね。あー、返すがえすも、あの冷血悪魔め!!

ダイニングから出て崩れた着付けのまま、考えがまとまらずうろつく。
よし、とにかく部屋に戻って、もう一回最初からやってみよう。焦るな、焦るな。


「何かお困りのことがありますか?」

不意に後ろから声をかけられ、振り向いた。
そこにはブラウスにロングスカートの女性。年の頃は40代後半かな。
ショートカットで、鼻筋が通っていて、唇の形がどこか見たことあるような……。
とにかく、ものすごく整った顔立ちの人だ。

どう見てもお手伝いさんじゃない。
会社の関係の方?でも、ここは羽前邸だし、女性の服装もメイクもカジュアルでオフィス感はない。

「あの……」

そう、まずは私の身元を明かさねば!
羽前家の方からしたら、不審者はこっちだ。

すると、女性の方が口を開く。
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