クールな御曹司にさらわれました
秘書室で30分ほど待っていると、ようやく尊さんが姿を現した。

「待たせたな、タマ」

ええ、待ちましたって言いたいところだけど、スポンサーで教師で借金している相手なので、なにも言えない。

「御台寺、こいつに何か変なことは吹き込んでないだろうな」

「ご安心ください。尊社長のネガティブキャンペーンを少々しただけですわ」

「それならいい。タマには、存分に俺を恐れてもらわなければならないからな」

ふたりの会話に辟易。やっぱりこの社長、意識的に私を威圧してんのね。
サラさんとはそこで別れ、私は尊さんに伴われ、地下のロータリーで尊さんの車に乗り込んだ。遅くなる日は加茂さんを返してしまうことも多いみたい。

「あの、今日はどちらに?」

「おまえは黙ってついてこい」

「はあ」

「ところでタマ、その着物」

私はぎくりと固まった。尊さんのお母さんに着付けを手伝ってもらったけど、まさかバレてないよね!?

「似合っているな」

思いもかけない褒め言葉が降ってきて、私は驚きのあまり運転席に勢いよく顔を巡らせた。

「今、褒めました?」

「褒めたというか、感想だ。ただの意見に、褒めただなんだと。自意識過剰だぞ。自分という存在を見つめ直した方がいいな」

聞くんじゃなかった……。
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