クールな御曹司にさらわれました
まあ、いいか。着付けについてはバレてない。

連れて行ってもらったのは料亭だったんだけど、ドラマで見るようないかにも感がない。ほら、竹藪みたいな庭園があって白木の玄関で……。そういう感じじゃない。

なぜなら、ホテルの屋上庭園に作られてるんだもん。入り口はガラス張り、池に錦鯉は泳いでいるけれど、噴水だしアクアリウムみたい。

なにこれ、なんなのこれ。こんなおしゃれなお店を普通に使える尊さんはあらためて別次元の存在だと思う。
高層階の屋上は表参道から原宿方面がよく見えた。この空間の雰囲気のせいか、ただの街の灯りすら綺麗だ。生ぬるい春の風がまとめた髪をなぶる。

「ほらこい」

入り口で尊さんがペットでも呼ぶように掌を上に向け、二本の指をくいくいと動かしている。着物の裾を抑えながら、あわてて追いかける私だ。

料亭かぁ。つまりは懐石料理ってことだよね。
実は食べたことない!懐石料理って!

最近食べた美味しいものは羽前邸の朝晩のごはんだけど、洋食が中心だった。でも、フレンチよりはハードルが低いかも!

……と思っていた私は早速二品目のお吸い物で蓋が開けられず、力を込め過ぎひっくり返すという失態を演じたのですけどね!
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