クールな御曹司にさらわれました
私の着物を気遣いながらお吸い物を片付け、新しいものを手配してくれる給仕の女性。その向こうで尊さんが心底馬鹿にした目で見ている。

「お・お着物は無事です!」

そういうことじゃないっぽい。尊さんの顔を見ながら、冷や汗がだらだら流れるのを感じる。

「タマ、おまえが何をやらせても不器用なのはだんだん把握してきているが、吸い物の蓋も開けられない女なのか。指の機能が退化してるのか?老化してるのか?馬鹿にもほどがあるぞ」

怒られたー。しかも感じ悪いー。

「すみません。でも、たまにありません?密閉性の高い容器って蓋が開かなくて……」

「俺に同意してほしいのか?馬鹿め」

馬鹿の連呼。本当にムカムカする。
そりゃ、私は尊さんのように賢くありませんよ。すっごい大学出てないし、会社任されてないし、責任ある立場にもいない。
だけど、それが私を馬鹿にしていい理由になるかっていうとならないでしょ!?今だって、お椀が開けられなかっただけじゃない。そこまで言うか!?

そもそも、この花嫁修業だって、私は何も望んでないっつうの!
ああ、やっぱり息抜きの外食なんかじゃなかった。地獄のレッスンの続きだ。
もういやいやいや!
逃げ出したい!!

「タマは本当に物覚えの悪い貧乏人だが、ひとつだけ感心していることがある」

ふと尊さんが言う。
てっきり罵り言葉が続くものと思っていた私が顔をあげると、尊さんが真顔のまま私を見つめている。

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