クールな御曹司にさらわれました
「その表情だと、娘から見ても真中玄之丞はクズ野郎で良さそうだな」

肯定はしたくないけれど、まったく否定できない。

私の父は、正真正銘ド底辺のクズ男だ。
新しいことが大好きで、好奇心が強くて、商才もないのに、ホイホイお金を借りて事業を起こしては失敗する。私が小さい頃から、それの繰り返しだった。
また、本人はすこぶる明るく、前向きな人タラシなもので、周囲は巻き込まれるような形で協力してしまう。結果、泣いた友人知人は数知れず。

家族なんてなおさらだ。父の代わりに頭を下げ続け、働き続けた母は私が中学生の頃、病気であっけなく亡くなった。そこからは泣く暇もないほど、苦労の連続だった。貧乏に負けないために必死で生きてきた。

「真中玄之丞はうちの親父に出資を依頼し、起業してすぐに資金を持ち逃げした。その額が一億円だ」

なんてことだろう。どうしようもない人だと思っていたけれど、まさかまさか、泥棒までやってのけるなんて。ショックでへたり込みそうになる。

「あのう……それで父はどこへ?」

「それを聞きたいから、おまえをここへ連れてきたのだろう」

「私が父の行方を知ってると」

「グループの探索能力は優秀なはずだが、おまえの父親に関しては全く見つからないんだ。立ち回り先に現れない。自宅にも戻っていない。でも、実の娘のおまえなら何か知っているだろう」
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