クールな御曹司にさらわれました
あー、そうなんですか。ようやくこの拉致監禁事件の中身が見えてきましたよ。
はいはいお父さんね、うちのクズ親父のせいで、私はこんな目にあってるのね。
今までもあったよ、こういう大迷惑。借金取りに押しかけられたり、お母さんの残してくれたお金に手をつけられ大学の授業料が払えなくなったり、数えきれないほど経験してる。でも、その中で迷惑ならトップクラスかもしんない。今回の拉致。

「えーと、申し訳ないですが、お力になれないです。家に戻らないので、私も父とは半年以上会ってないですし」

「女がいるとか、そういった様子はあったか?」

「いや、もう、全然わかんないです。私が会社に行ってる間にそっと戻ってくるので、びっくりするほど会わないんです。たまに顔合わせても『お金貸して』って言われるくらいで」

そんな父もかれこれ一ヶ月、家に寄り付いた形跡がない。

「携帯電話はどうだ?」

「あの人、使用料払わないで解約されちゃうことが多いので。番号もアドレスもほいほい変わるんです」

試しにバッグからスマホを取り出しかけてみる。電波にのって『おかけになった電話番号は~』というお決まりのアナウンスが聞こえる。
ね?と言わんばかりに片方の唇を引き上げてみる。私じゃ何にもできないんですよーという意味を込めて。
しかし、羽前尊は納得した表情にはならない。

「親父の羽前二郎と、真中玄之丞は大学時代からの親友だそうだ」

真顔で語りだす羽前尊を見上げ、私はするするとスマホを持った手を降ろす。

「真中玄之丞がいくつもの事業で失敗していると知りながら、新たな起業話にのって出資したのは親父の失策だ。本来なら一億の負債は親父のポケットマネーから賄ってもらうところだが、そうもいかない事情がある」

「は・はあ」

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