クールな御曹司にさらわれました
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翌週木曜夜、いよいよ会議は明日という日、私は焦っていた。
はっきり言えば終わらない。
明日の会議資料を作って出すどころか、まとめが終わらない。どうも辞めた大島さんは自分の不手際がバレないように、あった資料をわざと紛失させたりしているようだ。足りない分は営業たちのPCデータをもらい、資料室に眠っていた分厚いファイルをめくった。
データの電子化を進めていない我が社は、だいたいの記録をアナログで取ってある。それが幸いでもあり、不運でもある。つまりは探せば資料は出てくるわけだから、なあなあにもできず、諦めることもできないのだ。
「真中―、今日は手伝うよ」
横のデスクで小森が言ってくれる。でも、小森もまだ仕事が多く、毎日居残りだ。本日もオフィスで残業しているのは私たちだけ。
「大丈夫、プリントアウトは明日の早朝やるから。データ整理だけなら今夜中にぎりぎり終わるよ」
「寝る暇ないじゃん」
「なまけ者の小森から手伝うって言葉を聞けただけでレアだからいいわ。元気出た」
「おまえね、もう少し頼ってくださいよ。友達なんだから」
小森がパソコンの画面を見たまま唇を尖らせている。
私と小森は男女の同期だけれど、友情以上の感情はまったくない。これからも断言できるけどない。だから、善意100パーセントで頼ってくれという小森は少々感動的だった。