クールな御曹司にさらわれました
「相当寝たな。脳が溶けてるんじゃないか?」

長い廊下を向こうから歩いてくるのは尊さんだ。私はその格好を見て、質問やらなにやらを忘れ、吹き出した。

「何がおもしろいんだ、タマ」

「だって……尊さん、絵に描いたような……」

尊さんは普段見ないようなシャツにジーンズというラフな格好で、手には紙袋。そこからバゲットが覗いている。
あー、ひと昔かふた昔くらい前のイケメンが坂道でヒロインと出会いそうな感じ!!紙袋に入ってるのってバゲットかオレンジでしょ!?

そして、その定番イケメンの休日スタイルが想像以上に似合わなくて笑ってしまったのだ。
爽やかさがないんだよ、この人。

「なんでもいいが、服を部屋に置いておいただろう。御台寺がおまえのクローゼットから持ってきたものだから安心して着ろ。そしたら、洗面所を教えてやるから顔を洗って来い。朝食にするぞ」

「へぇ、あの尊さん、ところでここはどこでしょう」

「羽前家の鎌倉の別邸だ。普段は誰も使っていない」

尊さんは私に洗面所やキッチンの場所を指示すると先に行ってしまった。

羽前家の別邸……そんなところに昨夜私はお泊りしたようで……。
しかも、尊さんとこの家にふたりきりだったわけで……。

「やめよ、深く考えるの」

当座、目の前の仕事をしようと部屋に出戻る私だった。
サラさんが用意してくれたのは、ジーンズにカットソーという、非常に楽ちんな普段着でその点は感謝だ。
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