ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

……やがて、車が邸宅に近づくと、会長は目を覚まして、

「…うん? 寝ていたのか…」

と、目蓋を指で押さえた。

「…よく寝ていられましたね?」

声をかけると、

「……君の運転がうまいから、つい気持ちよくなって……」

と、あくびを一つして、口に手をあてた。

「ありがとうございます。だけど、だいぶお疲れのようで…」

「ああ…少しな…」

と、二度目のあくびを噛み殺す。



ーー会長を送り届けて、

「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。明日も頼むよ」

玄関前で別れたーー。



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