JUN-AI 〜身がわりラバーズ〜
そして翌日。


繁忙期にしては早めの帰宅をしてくれた響に、母さんから教わった新メニューを振舞うと…

その人は大好物が増えたと感激してくれて。


そのあと久しぶりに、極上シャンプーをしてくれた。



「ん、いい匂い…」

ネロリの香りと、相変わらずの快楽に身も心も委ねてると…


「明日の休みさ、憧子さんちから戻って来たら髪染め直そっか」

すっかり色落ちしたそれに、そう提案される。


「…ありがとう。
じゃあ私も、響と一緒の黒がいい」


照明デザイナーの仕事に戻るからには、クライアントやその関係者の手前、身だしなみもちゃんとしなきゃいけないし。

今は、バカップルでも響と一緒がいい。


すると、ふはっと嬉しそうな笑声が降って来て…

ふっと唇に、響のそれが重ねられた。



「好きだよ、憧子さん」


「っ…

うん、私も好き…」

ふいうちの威力と慣れない言葉にやられて、甘い視線から逃れながら応えると。


「憧子さんいきなり可愛すぎるんだけどっ」

そう言われて、余計戸惑ってしまう。



「っ、とにかくっ、ワインレッドは髪じゃなくて…
照明で、あの夕陽の世界を反映するから」

照れくささを誤魔化すようにそう切り替えると。


「…うん。

それめちゃくちゃ楽しみにしてる」

その人が、眩しそうに目を細めた。
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