ifの奇跡
さっきの店でのよそよそしい空気も今はなく、2人で声を出して笑っていた。

何より黙ってしまうと、途端に緊張に飲ま込まれてしまいそうで怖かった。

キッチンでグラスを出してくれている冬吾に話しかけながら部屋の中を物珍しそうに見ていた。


「ここの裏側はどうなってんの?」


キッチンの後ろ側に回ると、キッチンの壁部分がクローゼットになっていてベッドルームのようになっていた。

まだカーテンのしまっていなかった大きな窓からはバルコニーに出られるようにもなっていて、綺麗な都会の夜景も目に飛び込んで来た。


「そっちはベッドしかねぇよ。あ!莉子、悪りぃけどカーテン閉めといてくんない」


後ろから声が聞こえた時、窓に映った冬吾と目が合い、思わずパッと逸らしてしまった。


「あ…うん」


ベッドという単語と実際に見えた大きなベッドに…返事に緊張の色が表れてしまったかもしれない。


「美沙と哲平君…遅くない?」


2人でソファに座りながらテレビを見ていたけど、あれから30分近く経って流石に遅すぎるんじゃないかと心配になってきた。

なのに何故か冬吾からの返事がなくて…不思議に思い彼の名を呼んだ。


「冬吾?」


冬吾は私の顔をチラリと見ると直ぐに目を逸らした。

何か…彼の態度がおかしい気がして、もう一度聞いた。


「ねぇ、冬吾…どうかした?」


ソファで隣に座っている冬吾の顔を覗き込もうと体を前のめりにして少しだけ冬吾の方に傾けた。

冬吾は言いにくそうにボソッと小さな声で何かを言った。


「え…何。ゴメン聞こえなかったからもう一回言って。」

「あいつらは来ねぇよ…。」
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