ifの奇跡
そう言い放った冬吾の言葉にピキンッと体が一瞬固まった気がした。


「な…んで?」


それまで私から視線を逸らしていたはずの冬吾の視線が私に向けられた。

息が詰まりそうなほど長く熱く感じた…数秒間の沈黙の後、冬吾が覚悟を決めたようにその口を開いた。


「俺が….莉子と2人になりたかったからだよ。」

「だ、だったら美沙達は?」

「知らねぇ。てか気にする所そこだけ?」


そう問われて、今度は私が冬吾の視線から逃げるように目を逸らしてしまった。


「…けど多分、哲平の家じゃない?あいつらが協力してくれたんだよ。最初から莉子に俺と2人だって言ったら来てくれないと思ったから、予定では一応あいつらもここまで来て途中で抜けだす筈だったんだけど。美沙ちゃんが気きかせてくれたみたい。」


“いつの間に………”


だけど、美沙の気持ちは痛いほど伝わって来た。

今日電車の中で2人で話して、美沙には私の気持ちも素直に話したから。

だから、美沙は私の為にもそうしたのだと思った。


「莉子…」

「な、な…何…?」


緊張でどもってしまった。


「…………プッ」


私の右隣から聞こえたその音に、顔をそっちに向けると優しい目をした冬吾と目が合って…

本当は “笑わないでよ” って言うつもりだったのに、何も言えなかった。


「莉子…緊張しすぎ。」


そう優しく言って私の髪をそっと撫でた。
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