ifの奇跡
それからは、彼とはほんの少しの時間も惜しむかのように暇さえあれば会っていた。

卒業後も東京に残るとは言え、今の学生生活と社会人とでは全く生活のリズムも何もかも変わってくるだろうし…。

冬吾も来年は大学4年生になる。

就職活動なんかで忙しくなるのは分かっていた。


そんな時だった……。


全国ニュースの天気予報で、全国的に大雪が降ると言われていた2月のある日。

その日は東京にもチラチラと雪が降っていた…。

積もることはなかったけど、外はすごく寒くて…。

試験も終わって後は、ほとんど卒業まで学校に行かなくてもいい私たちは卒業を待つだけで一足早い春休みに入っていた。

携帯にかかってきた母からの電話に、私は言葉を失った……。


たまたま、遊びに来ていた美沙が携帯を落とした私の異変に気付き携帯を拾い上げてくれた。

まだ切れていなかった携帯の向こうから聞こえてくる母の声を遠くに聞きながら、私の代わりに美沙が電話に出て母と話してくれていた。


美沙が母に

「分かりました。すぐに向かわせますので…莉子のことは私に任せて安心してください。」

そう言って電話を切ったのが分かったけど何も動けなかった。

早く!早く!実家に帰らなきゃ………

そんな気持ちはあるのに…母から聞いた言葉をまだ受け入れたくなくて。

現実だと思いたくなかった。

だけど、目の前には私の代わりに私の服や着替えをクローゼットから取り出しキャリーバックの中に詰めて荷造りをしている美沙が見えて…思わずポツリとこぼしてしまった。


「…美…沙、何してる…の?」


そんな私の言葉に手を止めた美沙が、唇を噛み締め何かを堪えるような顔で私を見つめその腕を大きく広げると私の体を包み込んだ。

美沙の手が私の背中をポンポンと軽く叩く…。

その瞬間、母からの言葉が現実のものとして私の頭に一気に流れ込み大声を上げて泣いた。
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