ifの奇跡
美沙は黙ってずっと私を抱きしめてくれていた。

そして私が少し落ち着きを取り戻した頃、


「莉子は少しだけここで待ってて。すぐに戻るから絶対だよ。」


そう言って美沙はすぐにうちを飛び出すと、20分ほどで本当にすぐに戻って来た。

戻って来た美沙の手には、私と同じように小さなキャリーバックがあった。


「一緒についていくから安心して。」


優しい笑顔でそう言うと


「ほらっ、莉子も早くそれだけ入れちゃって。早く帰ろう。」

「うん…ありがとう。美沙、本当にありがとう…。」


鼻詰まりの声で美沙にそう答え、2人で急いで私の実家に向かった。

トンネルを抜けると…景色が一変し辺り一面の銀世界に変わっていた。

綺麗…………だけど今の私にはとても悲しい景色にしか映らなかった。


窓の外を映していたその視線を、座席に戻って来たばかりの隣の美沙に移した。


「さっきね…哲平から電話が入ってたから…今電話して来たの。そしたら、ちょうど大学で冬吾くんも一緒だったから…私から伝えておいたよ。冬吾くんもすごく心配してたから…また落ち着いたら莉子からも連絡してあげて。」

「…うん、ありがとう。」


新幹線を降り、特急に乗り換えてから30分ほどで地元の生まれ育った町の駅に着いた。

いつもなら此処に帰って来た時はお父さんが車で迎えに来てくれたのに……

この先、お父さんが迎えに来てくれる事は二度とないんだ…。
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