ifの奇跡
涙腺の壊れてしまった目からまた涙が溢れて視界が滲んでくる…。

そんな私の背中を包み込んでくれる温かい手がある事が、今の私には本当に有り難かった…。

タクシー乗り場の列に並び、順番が来たタクシーに乗り込んで運転手さんに自宅の住所を告げると、車が雪道を慣れた運転で走り始めた。

だけど、どんなに慣れていても…どんなに気をつけていても

起こってしまうのが事故というもので………

そんな雪道の事故に巻き込まれてしまった私の父が

今日この世を去った…


駅から20分ほど走ると、見慣れた近所の景色が窓に映り込んで来た。

いつもと同じ見慣れた景色なのに、今日のそれには色がなかった。

ただ…どこまでも真っ白な世界がそこに広がっていた。


タクシーを降り、家の玄関の前に立つた瞬間、


“あぁ….父がいる”


不思議とそう感じた。

美沙を連れて家に入ると、福岡からお姉ちゃん達も家族で既に帰って来ていた。

久々に会った姉と抱き合い涙を流す…。

母は気丈に振る舞っていた…。

ただ一人涙を流さず、父のそばで来てくれた親戚の人たちと言葉を交わし頭を下げていた。

母も姉も私を無事に此処まで連れて帰って来てくれた美沙にとても感謝していた。

布団に眠るように寝かされた父の顔は…本当に穏やかだった。

生きている父に会えたのは、お正月が最期になった。

だけど私の記憶に残る最期の父の姿は、笑顔でとても幸せそうだったから…

私も最期は父に笑顔を向けてお別れをした…涙でいっぱいの笑顔だったけどお父さんに向けた最期の笑顔だった。
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