Spider
「わ、私は」

「ん?」

フェンスとのわずかな隙間に顔を入れ、彼が私をのぞき込む。
至近距離の彼の顔。
唇さえもふれそうなほど。

「私は、なんですか?」

意地悪く、彼が笑う。
こんな顔をする人だなんて知らなかった。
というか、意識しだしたのは花火大会に誘われた、あの日から。

「だから」

「だから?」

吐息が、かかる。
レンズの、向こう。
怪しい火を灯した、瞳。

「まだ、わから、ないっ……」

「可愛いですね、和花(のどか)は」

ちゅっ、唇に彼の唇がふれた。
驚いて見上げると、花火をバックに笑う彼。
その笑顔が……とてもきれいだと思った。
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