行雲流水 花に嵐
「ほぉ。場所は知らねぇのか?」

 宗十郎は刀を肩に担いで、竹次に聞いた。
 その後ろでは、お楽が少し不満そうな顔をしている。

「お、大親分は慎重なお方だから、居所はほとんどの者が知らねぇ。一家でも、知ってるのは勝次兄ぃと、あと何人かぐらいだ。特別座敷って言ってるが、実際はあっちが本店なんじゃねぇかと思ってる。大親分は昔いろんなところで拐かしをやってたらしい。そういった表に出せねぇ女子を、手元に置いて働かせてるとか聞いた」

「拐かし? ふーん、元手をかけずに女子を調達してたってことか」

 遊女は通常、女衒から買い取られた女子である。
 端から自分で女子を攫えば、金をかけずに済むわけだ。

 ただそのような女子、逃げ出す可能性が普通より高いだろう。
 色町で、普通に働けるはずがない。

「牢屋みてぇなところに押し込めてんのかな」

 逃げ出さないようにするには、どこかに閉じ込めるしかないのでは。
 宗十郎が呟くと、竹次は薄笑いを浮かべた。

「さぁ……。でも特別座敷というからにゃ、それなりなところなんじゃねぇかと。実際そこに行ったお大尽は、皆満足してるしな。亀屋とは比べ物にならねぇって言ってるぜ」

「比べる見世が悪過ぎらぁ。あそこよりいい見世なんざ、色町にゃごまんとある」

 ぐ、と竹次が黙り込む。

「でもお前はそこに、おすずを入れようとしてたんだろ。だったらやっぱり、折檻部屋みてぇなものじゃねぇのか」

「そんなんじゃねぇ。ただそこに入れられたら、もう出られねぇってだけだ」

「……」

 どういうことだろうか。
 お大尽、というからには、それなりの身分の者が出入りしているということだ。
 そのような者が牢に閉じ込められた娘で満足するだろうか?

---そういう弱った女がいいって野郎もいるだろうがな---

 とりあえず、特別座敷の内情はおいておくことにし、宗十郎は質問を変えることにした。
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