行雲流水 花に嵐
「あら、信用ないわね。でも、ふふ、この玉乃ちゃんにそこまで想われてるって思うと、あたしも肚が決まるわ。安心しなよ、あたしは裏切ったりしないから」
ぎゅ、と玉乃を抱き締めると、片桐はそろりと立ち上がり、窓に近寄った。
音がしないように引き開けると、少し身を乗り出して通りを見る。
この部屋は人が一人通れるぐらいの細い路地に面している。
少し向こうの植え込みの中に、蹲る人影があった。
それに向かい、片桐は袂に入れていた小さな小石を投げる。
小石を食らった影が起き上がり、ぱっと駆け去って行った。
「さて玉乃ちゃん。これでこっちの準備は整った。太一を連れて来てくれる?」
窓を閉めて、片桐が言うと、玉乃はちょっと驚いた顔をした。
「え、今? 皆が寝静まってからじゃないと、梯子動かせないよ」
まだようやく夕闇が迫る頃だ。
日も落ち切ってないので、当然見張りも起きている。
「夜のほうが難しいのよ。警戒するからね。それにね、夜の夜中であっても、三階の入り口から出入りするのは危険だわ。見張りの目の前通らないとじゃない」
「じゃあ……」
気付いたように、玉乃が押し入れを見た。
「そういうこと。あそこからなら、見張りからもっとも遠い。今は皆がやがやしてるだろうから、多少動いても他の者に紛れて目立たないだろ」
言いつつ片桐は押し入れを開けた。
中段に足をかけ、押し入れの天井を押し上げる。
「そういえば片桐様、前に押し入れのこと聞いてたね」
「まぁね。この上も、一応探索済みよ」
天井板を外して、さらに中に入り込む。
三階の、押し入れ部分。
どこかを開けなければならない。
「左奥のほう。あそこ、何もないはずだよ」
下から覗き込みながら、玉乃が言う。
片桐はさらに奥に入り込み、一番奥の天井---三階の、押し入れの端っこの床にあたる部分に手の平を当てた。
しばらくそのまま、上の空気を読む。
「……うーん……。人の気配は……ないように思うけど。坊はどの辺にいるのかしらね」
板を少し剥がすにしても、すぐ上に太一がいたら危ない。
驚いて騒がれたら終わりだ。
ぎゅ、と玉乃を抱き締めると、片桐はそろりと立ち上がり、窓に近寄った。
音がしないように引き開けると、少し身を乗り出して通りを見る。
この部屋は人が一人通れるぐらいの細い路地に面している。
少し向こうの植え込みの中に、蹲る人影があった。
それに向かい、片桐は袂に入れていた小さな小石を投げる。
小石を食らった影が起き上がり、ぱっと駆け去って行った。
「さて玉乃ちゃん。これでこっちの準備は整った。太一を連れて来てくれる?」
窓を閉めて、片桐が言うと、玉乃はちょっと驚いた顔をした。
「え、今? 皆が寝静まってからじゃないと、梯子動かせないよ」
まだようやく夕闇が迫る頃だ。
日も落ち切ってないので、当然見張りも起きている。
「夜のほうが難しいのよ。警戒するからね。それにね、夜の夜中であっても、三階の入り口から出入りするのは危険だわ。見張りの目の前通らないとじゃない」
「じゃあ……」
気付いたように、玉乃が押し入れを見た。
「そういうこと。あそこからなら、見張りからもっとも遠い。今は皆がやがやしてるだろうから、多少動いても他の者に紛れて目立たないだろ」
言いつつ片桐は押し入れを開けた。
中段に足をかけ、押し入れの天井を押し上げる。
「そういえば片桐様、前に押し入れのこと聞いてたね」
「まぁね。この上も、一応探索済みよ」
天井板を外して、さらに中に入り込む。
三階の、押し入れ部分。
どこかを開けなければならない。
「左奥のほう。あそこ、何もないはずだよ」
下から覗き込みながら、玉乃が言う。
片桐はさらに奥に入り込み、一番奥の天井---三階の、押し入れの端っこの床にあたる部分に手の平を当てた。
しばらくそのまま、上の空気を読む。
「……うーん……。人の気配は……ないように思うけど。坊はどの辺にいるのかしらね」
板を少し剥がすにしても、すぐ上に太一がいたら危ない。
驚いて騒がれたら終わりだ。