行雲流水 花に嵐
 一方勝次を追った宗十郎は、ひたすら立ちはだかる男たちを殴り倒しつつ部屋の奥へと進んだ。
 真っ直ぐ蔵に行かないのは、鍵を取りに行ったからだろう。

---ったく、鍵ぐれぇいつも持っとけってんだ---

 一体どれだけ集めたんだ、というほど湧き出て来る男どもに苛々しながら、宗十郎は先を見た。
 少し先に、細い階段がある。
 勝次は二階に上がったようだ。

 が、階段の前にもみっしりと男たちが控えている。
 刀は下手に振るうと、この狭さではどこかに引っかかるのがオチだし、突きにするにもこれだけの人数を相手にしていたら刃がもたない。

 なのでもっぱら素手で倒しているのだが、素手だと体力を使うのだ。
 すでに宗十郎は息が上がっている。

 と、その時、階段の向こうに、ちらりと影が動いた。

「旦那っ! こっちでさぁ」

 文吉が、階段の下から顔を出している。
 ちらりと階段を見上げ、宗十郎は文吉のほうに走った。

 階段に控えていた男たちは、横の廊下に外れた宗十郎に、慌てて降りて来る。
 こういうとき、狭いのは助かる。
 見事に団子になり、男たちはもつれ合って階段から落ちた。

「文吉、勝次は上ではないのか?」

「へぇ、でもこっちからも上がれやすよ。隠し階段を見つけたんでさぁ」

 先に立った文吉が、建物の一番奥に走り込む。
 そして厠の扉を開けた。

「ここの奥の壁が開くんでさぁ」

「よく見つけたな」

 厠の中など、こういうときは盲点だ。

「いや何。ちょいと腹の調子が……」

 へへ、と文吉が頭を掻く。
 見ないと思ったら、厠に行っていたらしい。

「……余裕だな」

「いやいや、下手にあっしが飛び込んでも邪魔でやんしょ」

「しかしよく考えたら、誰かが入ってたら使えねぇじゃねぇか」

「そんときゃ一大事ですぜ。誰が入ってようが、それこそ戸ぶち破りますよって」

「用を足してるときに戸を蹴破られたら堪らんな」

「戦国武将は用便中でも刀を構えてたって言いやすぜ」

 くだらないやり取りをしているうちに、壁の一面の下板が外れ、横穴が現れた。
 少し屈んで覗いてみると、急勾配な階段がある。
 ほとんど梯子だ。
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