行雲流水 花に嵐
「で、上月の話に乗ったってことかい?」

 まだ納得しかねる様子で聞く宗十郎に、要蔵は首を振った。

「上月の若当主は、ただ惚れた女を助けたいだけだ。女一人何とかするために、見世ごと潰すにゃ分が悪いぜ。それに、単なる世間知らずな若様の暴走でしかないしな。けどほれ、ガキまで巻き込んでるんだ。ちょっと放っておけねぇ事態だろ」

 言いつつ、じゃら、と要蔵が重そうな袱紗包みを取り出した。
 上月の家からの頼み賃と、色町の主立った楼主からの依頼料だろう。
 が。

「でかい仕事のわりにゃ、しけてねぇか?」

 要蔵一家と亀屋の全面戦争になる可能性があるのだ。
 いつもそうだが、今回は全員が命懸けである。

「色町からは、折々に貰ってるからな。そうそう出せねぇのは上月家よ。若当主を解き放って貰うのに大分使っちまったようだから、もう身代も危ういんだろ。掻き集めた結果だな」

「……ったく、殿様に知れたら切腹ものだぜ」

「ま、わしも日頃旦那にゃ世話んなってるしな。身内割引ってことで」

 ふふ、と笑うが、どうにかして穴は埋めるだろう。
 宗十郎からすると、別に上月家がどうなろうと知ったことではないので、金の取り立ては好きにして貰っていい。

「……ま、太一は関係ねぇしな」

 甥とはいえ、さほど思い入れはないが、関係ない子供を巻き込むのは感心しない。
 しかも親が遊郭で作った借金のためになど、許されることではないだろう。
< 17 / 170 >

この作品をシェア

pagetop