行雲流水 花に嵐
「潰すといっても、中の女郎は皆攫われてきた女子かもしれん。あるじの亀松とその女、あとは亀松の手下もいるだろう。そこを根こそぎ殺っちまおうと思う」

 そう言って、要蔵は控えていた手下の駒吉(こまきち)に目を向けた。
 さっと、駒吉が用意していた別の袱紗を差し出す。

「旦那と文吉と、あと片桐(かたぎり)の旦那にも頼んでいる」

 片桐も宗十郎同様、要蔵の下で刀を振るう牢人だ。

「まず人数を確定しないことには、手は出せんな。ざっと聞いただけでも五、六人はいる。まさかそれだけではあるまい。十人以上となると、俺と片桐だけでは手が足りん」

「考えている。まぁじわじわ一人ずつ片付けて行くという手もあるが、下手打ちゃ親玉を殺る前にとんずらされるかもしれんしな。逃がしたら厄介だ」

 とりあえず、まずは様子を探らせる、と言って、要蔵は先の袱紗を解いた。
 十両の金を宗十郎に差し出す。

「今回は結構な大仕事だ。一人二人の暗殺じゃねぇからな。まずは手付。残りは始末がついたあと、二十両」

「都合三十両か」

「今回の話にゃ、大店も乗ってるしな」

「ま、上月の家よりは、その辺の商家のほうがよっぽど裕福だろうからな」

 言いつつ、宗十郎は十両を掴んで懐に入れた。
 これで当分凌げる。
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