キミノテノヒラノウエ。
「笑顔がキモいって心外だな。」と不機嫌な顔をしたけど、
私がベッドの横に座ると、

「チビスケ、心配させて悪かった。手術にならないかもしれなかったから、
無駄に心配させると悪いと思って…」

「具合が悪いなら、普通の顔はやめてよ。
後から、お腹が痛かったんだって、
…どうしていってくれなかったんだろうって、
私は頼りないかもしれないけど…」とまた、涙を落とすと

「頼りないなんて思ってない。心配かけたくなかっただけだよ。」と頭を撫でる。

「これから私が心配かけるから
何にも相談しないって言ったら?」

「…そりゃ困るな。」

「じゃあ、薫ちゃんもちゃんと言ってよ!」

「…腹が痛い。」

「先生呼ぶ?!」と驚いて聞くと、

「キスしてくれたら治る…と思う。」とくすんと笑う。

私が返事をせずに、固まると、

「だって手術中なにがあるかわからないし、
ちゃんとキスもしないで死んだら、
…化けて出ると思う」と真面目な顔をするので、

「…お化けは怖い。」

とベッドな上にかがみ込んで、そっと頬に唇を寄せると、
薫ちゃんはグイッと私を引き寄せ、唇に唇をつけた。

この間にした一瞬のキスとは違って、
深く唇を重ね、息を注ぎながら、何度も角度を変えて、
私の頭をそっと押さえ
口の中に舌をゆっくり入れて、そっと舌を絡める。

「んんっ…」と私が苦しくて声を出すと、そっと唇を離し、

「チビスケにそんなオンナの声出されたら、慌てるだろ。
…続きはもどってからにしておく。」

とクッと笑って私の手を握り、目を閉じた。



私は恥ずかしくて顔を真っ赤にして、横を向く。

頭がぼーっとする。

こんなキスは知らない。

私の手をシッカリ握った大きな手を睨んでみた。



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