イケメンなんか大嫌い

……あ、そうか……離婚したのか……。
私立の中学へ行った俊弥とは小学校卒業以来、何の音沙汰もなかったから知らなかった。

立ち止まったわたしに気付き、振り返る。

「……何、愛唯(あい)から聞いてなかったの?」
「……引っ越したとは聞いてたけど、理由とかは……」

「愛唯に話せばお前にも筒抜けかと思ってたわ」
「……わたし、愛唯ちゃんとは中学入ってからは……」

──だって、避けてたから。
幸いクラスも一緒にならなかったし、愛唯ちゃんと話さなくても過ごせたから。
俊弥と付き合い始めた愛唯ちゃんと……。

地下へと続く階段を降りて行く俊弥の後ろ姿を眺めていたら、気持ちがあの頃へ引き戻されるような感覚に陥った。

自分の心音が、段々と大きくなって響く。
……何を、動揺してるの?
とうの昔に置いて来た気持ちで、ただ会ってしまったからって。

ゆっくりと息を吐き出して、落ち着きを取り戻そうと試みる。

「……何トロトロしてんだよ、未麻?」

怪訝な顔で振り向いた俊弥に、わたしは階段の上から告げた。

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