イケメンなんか大嫌い
しかし、身構えたのはわたしだけで、俊弥は平然と運ばれて来たジョッキを持ち上げた。
「ん」
乾杯に応えないのもおかしいので、ひとまずジョッキをカチンと合わせる。
「で、何食うんだよ。唐揚げ頼んどいたけど」
「あぁ、唐揚げ好きだったよね……」
思いがけず口を滑らせてしまってから、慌てて手で押さえるが無意味だ。
横目で盗み見た俊弥の顔が、心無しか僅かに頬を染めたように見えて、益々焦る。
「……俺はな」
「えーっとじゃあっ! 白子ポン酢! ほっけ食べたい……」
メニューを繰りながら捲し立てると、隣からふっと笑い声が漏れ聞こえた気がして、振り向き睨んだ。
「……何よ、また色気ないとか思ってるんでしょ」
「いや? 居酒屋で色気も何もねぇだろ」
口元に浮かんだ微笑みには、やっぱり意地悪さは感じなくて、不覚にも心臓を掴まれたように胸が震え、目頭が熱を持ったように感じた。
正直、男子とふたりで居酒屋へ来たことはあまりなかった。
女の子らしさを演出していたら自然と、イタリアンだとかお洒落な店に連れて行かれることが多かった。
お酒が進むと、他愛もない話題で軽口を叩き合った。
「お前、漫画は隠してんの? 電子版で読んでんの? 部屋に痕跡無かったけど」
「えっ何でそれを!? まさか押入れの中、見た?」
「……カマ掛けただけ。やらしーそんな所に……」
「うわっやられた……そんなヘンな漫画は入ってないから!」
俊弥はグラスを傾け、わたしは頭を抱える。
本性を知られていることがむず痒かったが、飾らずにいられる心地良さを感じてしまった。