イケメンなんか大嫌い

玄関にふたり分の靴と、ふたり分の床を踏み締める音が軋む。
拒めなかった……。心の中で肩を落としつつ、笑顔を作り振り向いた。

「……お茶でも飲む?」

「いいよ」

手首を引かれ、ラグに座らされてしまった。
背後にはベッド。肩が触れるかどうかの距離は、思いの外近い。
整った顔がじっと見つめて来て、硬直してしまう。

……おかしい。これまで付き合った人とだって、幾度となくこんなシチュエーションを過ごして来たはずだ。
何故こんなにも心臓が爆音を立てているのだろうか。
見ていられずに視線を落とすと、顔の横に俊弥の手が伸びて来た。
ぎくりと心臓が跳ねると同時に、髪に優しく指が通され、今度は高鳴り始める。

それだけのことで目眩がしそうに顔が熱く、どういうわけか泣き出しそうな程だった。
初めて触れられたわけでもないし、それどころかついこの間あんな激しい……。
唐突に数日前の行為が脳裏を掠め、一層顔を赤くした。

しかし先日のような強引さはなく、ゆっくりと距離を詰めてくる。
大きな手に顎を上向かされ、目に飛び込んで来たのは焦れたような瞳。
俊弥も同じようなことを考えてる……?

「……ち、ちょっと待って……」
「……やだ、待たない」

咄嗟に胸の前に掌を広げ、抵抗を示してしまったが、怯むことなく対抗して来る。

「心の準備が……」
「部屋に入れたってことは、そういうことだろ?」

腕を取られ、その眼力に身動きが取れなくなった。
端正な顔が徐々に近付いて来る。

あ、キス、しちゃう──

唇が、柔らかな感触と温度に覆われた。

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